9月22日(土)。
この日ジンペイと弟は、以前から母にも言われていた
礼服を買いに朝から出掛けました
これは祖父の時に必要なんだと思いながら。
まさかこれを母の為に着るとは、この時全く考えもしなかった。
その間、母の元にはジンペイのバイト先の店長の奥さん、
そして母の職場で仲の良かった方が来て下さったそうです。
2人には母が危ないことを告げ、これが最後になると思うので
会いに来て下さいとお願いしたのです。
いつもは目も開けず、か細い声で話す母なんですが
職場の方が来て下さった時は、ぱっちり目を開けて
普段どおりに話したそうです。
これにはかなりビックリしたと父親が話しており、
正直な気持ち、その時の母を見留めておきたかったなと。
でもこの日、2人に会ってて貰ってホントに良かった。
15時過ぎぐらいに病室へ戻ったジンペイと弟は
朝からずっと病院にいた父を
へ帰らせ、
かなり遅い昼食を病室でとりました。
この日に限って母はしきりに腕を動かしていました。
布団の中になおしてもすぐに外へ出す。
看護士さんに聞いたら
「自分で動く力がないからもどかしいんちゃうかなぁ？」
みたいなことを言われましたが、後で思うと
苦しかったんちゃうかなと。
「しんどい？大丈夫？」
と聞いても、必ず
「うん、大丈夫」
と答える母。
意識がほとんどないので苦しさはないと言われていましたが
母親なりの意思表現ではなかったのかと。
それにその時気付いてあげれなかったのが悔しくてたまりません。
で、この日は19時ぐらいに
へ戻り、
21時頃に弟だけ病院へ行きました。
そして、21時半頃。
弟から
「お母さん危ないねんって！！早よ来てや！！」
と電話がありました。
父親が先に
を出て、ジンペイも急いで着替え、
何かよくわかんないんですが、電話帳を持って
を出ました。
病院へは
で向かったんですが、今までにないスピードで
一心不乱にこぎました。
「お母さん、ジンペイが行くまで待っててよ」
と、心の中で祈りながら。
を置いたら猛ダッシュで、夜間面会の入口にいた警備員さんに
「○○の家族の者です！！」
と言うと
「早く行って下さい！！」
と返ってきました。
「えっ、えっ、そんなにヤバイん！？」
「早く、早く病室行かな」
と、心の中で叫んでました。
病室につくと、母は酸素マスクをつけ、目は半開き状態、
話すことさえままなりなせんでした。
でも意識はまだある、声はまだ届くとのことだったので、ジンペイは
「お母さん！お母さん！」
と必死に呼びかけました。
涙が滝のようにとめどなく溢れてきました。
ガリガリに痩せ細った手を握りしめ、
だんだんと冷たくなっていく母を感じました。
こすってもこすっても冷たくなっていくばかりでした。
弟が
「産んでくれてありがとう」
と母に言いました。
ジンペイは
「花嫁姿も孫の顔も見せられんくてごめんな」
と。
「次起きたら元気になってるから、皆で温泉行こな」
と。
ホントに長い時間、父やジンペイや弟は色んなことを母に話しかけました。
「心臓の動きが乱れてるから、もうあと数分です」
と看護士さんが言いに来ました。
（確か23時頃だったかと思います）
病室には心電図がなく、おそらくナースステーションで見ていたのでしょう。
しかし、母は頑張りました。
もう意識はほとんどなく、器官だけが動いている状態でした。
母は最後の最後まで「生きたい」という気持ちを持っていました。
「治そう」という気持ちを持っていました。
叔父や親戚が集まりました。
母は変わらず頑張って生きようとしていました。
それを見てるのがジンペイには辛かった。
「お母さん、もういいよ。頑張らんでいいよ」
そう、話しかけたこともありました。
あまりに辛かったので、看護士さんに
「どうにかならないんですか？」
と聞きました。
看護士さんは
「苦しみはほとんどないからね」
と優しく肩を抱いてくれました。
あまりにも母が頑張るので
「もしかしたら母は、育ての叔母を待ってるのかもしれない」
病室にいたジンペイ達はふとそう思いました。
母は小さい頃に母親を亡くし、それからは母親の兄にあたる叔父に
育てられたのです。
叔父は数年前に他界、叔母は足を悪くしている為、
病院に来るコトは出来ませんでした。
そこで親戚の叔父さんが、叔母に電話をしてくれました。
真夜中にもかかわらず、叔母は電話に出てくれ、
電話を通じて母に話しかけてくれました。
何を話したのかは聞いていません。
でも声はきっと母に届いているでしょう。
ジンペイは泣き疲れて、病室のソファで横になっていました。
睡魔に襲われ、目を時々瞑りながらも、母をずっと見ていました。
長期戦になりそうなので看護士さんが部屋を用意してくれたんですが、
ジンペイはコンタクトをはめていたので、そのまま寝ることは出来ない。
そこで弟が
へコンタクト用品を取りに帰ってくれました。
そして弟が帰って来る数分前、母の呼吸は静かに止まりました。
時間は9月23日午前1時17分頃。
もう涙は出ませんでした。
「
お母さん、よく頑張ったな」
ジンペイは母にそう話しかけました。
弟のことを1番気に掛けていた母なので、
弟には自分の最期を看取って欲しくなかったんでしょうか。
数分後、先生が病室に来ました。
母の様子を確認し、9月23日午前1時26分、母の死亡を告げられました。
看護士さんも
「よく頑張りましたね」
と、母を褒めてくれました。
そして
「ホントに自然な流れですよ」
と。。。
そう、苦しんで逝くコトもなく、自分の寿命を全うしたかのような
ホントに自然な流れのまま、母は旅立っていったのです。
母は22日に容態が悪くなりながらも、日付を超えることが出来ました。
そう、ちょうど
6ヵ月後の3月23日は母の
60歳のB.Dなのです。
約20年続けてきた仕事も、この最後の入院の時に
自分から退職すると決めました。
でも、ホントは続けたかったんよね。
定年退職の日を夢見て、体に鞭打って働いてきたんやもんね。
これは皆にお話してます。
母がここまで頑張ったのは、定年まで生きたかったという気持ちの表れだと。
看護士さんと一緒に母の体を拭きました。
途中、父と弟は退室しましたが、ジンペイは母の傍にいました。
14年前の手術の痕、初めて目にしました。
そう、一度も見たことがなかったのです。
母から見せられることもなかった。
1人で抱えて、辛かったよね、お母さん。
腕に残ってた放射線治療のマーカーの跡も痛々しかった。
もちろんキレイに消してもらいました。
ジンペイも退室し、皆で病室に戻ってきた時には
母はキレイに化粧をして貰い、微笑んでいました。
病院のパジャマから普段着に着替えさせて貰ってたので
ホンマに寝てるみたい。
「お母さん、起きてや」
って話しかけたら、起きてきそうな感じ。
でも母は冷たくて、死後硬直が始まっていた。
神様はイジワルだと思った。
あの小さな体で、決して諦めず、「必ず治る」と信じて
先生の言うことをちゃんと聞き、治療してきた母を
なぜあと半年、定年の日まで生かせてくれなかったのか。
でもね、
で母の物を整理している時に、大量の薬が出てきました。
ホントにもの凄い量でした。
その薬漬けの日々から、苦しみから、やっと母は解放されたのだ。
もしかしたら頑張った母を早く生まれ変わらせてくれるかもしれないと
ジンペイはなるべく思うようにしてます。
そうしないとやってられない。
でも神様はイジワルだ。
続く。。。
2007.12.27 Thursday
